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最近、北海道や九州でトレハを使った白くてソフトなパンが良く売れています。これはトレハの非着色性 あるいは保水力の強さがうまく利用された食品です。
トレハロースの大きな特長の一つとして、水をしっかりとキャッチし、つかまえた水は離しにくいという特質があります。つまり、瑞々しい食品を作るのにぴったりの糖質で、しかも水の自由度を奪うことで、静菌効果も期待できます。
また、トレハロースは、やはりその強い保水力で食品中のうまいバインダーとなり、食品をいつまでもサラサラさせてくれるまことに便利な糖質です
さて、この保水力あるいは水分保持力、食品製造中にはやっかいになる時があります。今までの糖と同じように考えて使ってみると・・・思ったような効果が得られないばかりか、むしろ悪い!そんな時はいつもより水を増やしてみる。いつもより水分を多い状態で加工を終了する。加熱工程なら熱のかけ方を変えてみる。水とトレハ、水と他の素材、トレハと他の素材、入れる順番を変えても結果が違ってくることがあります。より効果を得たい時もそんな一工夫がキーになることがあります。
そして、食品の中にしっかり入り込んで水を抱えたトレハロース、こうなるとその場でしっかり“杭 ”となって水の移動、つまり色や味の移動を防いでくれる何とも頼もしい存在となります。水分の移動を止める・遅らせる、そのメカニズムについても検討を続けています。
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極寒の地域に生息する生物は、その細胞内にトレハロースを貯えることはよく知られています。この現象は非常に理に適ったことで、トレハロースを貯えることで細胞内の水の凍結から生体細胞を守っているのです。細胞の周りの液中で氷ができると細胞の凍結が始まります。溶質は細胞内に入り、水は細胞から出ます。このプロセスにより膜が損傷を受け、細胞が破壊されていくわけです。ここで、細胞内にトレハロースがあると、凍結を抑制したり、あるいは凍結しても氷の結晶の成長を抑制し、凍結のダメージを最小限にくい止めていると考えられています。
愛知学院大学の清忠師助教授らによると、氷結晶の成長速度に関する一連の研究の結果、トレハロースを水に溶かしておくと、効率的に氷結晶の成長速度を抑制することが確認されています。また、トレハロース水溶液の凍結体の表面はトレハロースリッチな相で覆われて、平滑面になる傾向にあるのに対し、純粋な水を凍結させると、表面がごつごつした凍結体になるのだそうです。表面がごつごつすることで、形態的にも細胞や組織にダメージを与えている可能性もあります。
現実問題として、最近では冷凍食品が多く出回るようになってきており、その利便性は非常に高いものがあります。 しかし、急速冷凍技術などが進展しある程度品質劣化を抑えることが出来るようになったとはいえ、冷凍時や冷凍保存中、あるいは解凍時に多かれ少なかれダメージを受けて、ドリップが出たり、味質・食感の点で必ずしも満足のいくものは少ないようです。したがって、冷凍食品などの場合にも、上述のようにトレハロースの特性を上手に活用して、氷結晶の成長をコントロールすることにより、消費者にとって満足のいく冷凍食品が開発されることが期待されます。
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タンパク質や生体膜は十分な量の水により水和されて、安定化しているといわれています。また、細胞やタンパク質を乾燥させると自由水が奪われ、多かれ少なかれ細胞破壊やタンパク質の変性が起こります。あらかじめトレハロースを加えることで、乾燥しても細胞破壊や失活を最小限に抑えることができます。これは、トレハロースが水のクラスター構造に極めて良く似ているため、乾燥後も細胞やタンパク質の周辺で水の代わりにガラス状態(アモルファス)のトレハロースが存在して、細胞やタンパク質を安定化させているものと考えられます。この効果はカムフラージュ効果とも呼ばれています(東京工業大学・櫻井 実ら)。
事実、京都大学・鈴木哲夫先生の報告(下図)によれば、あらかじめ各種糖質を添加して凍結乾燥した酵素(アルコールデヒドロゲナーゼ)を65℃で20日間保存したところ、トレハロース添加系がもっとも高い酵素活性を維持していました。このことは、トレハロースが凍結乾燥後にアモルファスの状態で酵素タンパク質を取り囲み、高次構造を保持するためと説明できます。これに対して、特にグルコースやスクロース(砂糖)などで安定化効果が低いのは、トレハロースに比べ水和特性が低いため糖質の結晶化が起こり、酵素タンパク質の保持への寄与が低くなるからだと予想されます。以上のようなトレハロースの特性を活かして、いろいろな食品材料を凍結や乾燥して、付加価値の高い、あるいは利便性の高い食品を創製してみませんか。
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カルシウムは水溶液中ではイオンとして溶性状態ですが、リン酸塩などが存在すると、リン酸カルシウムが生成し不溶性沈殿を作ります。そこにトレハロースが存在すると、不溶性沈殿が減少し、溶性カルシウムの残存量が高まることがわかりました。この効果はトレハロースの添加量を増やすほど高く(濃度依存性)、スクロースなどではほとんど効果が認められませんでした(図1)1)。なぜでしょう?
トレハロースと塩化カルシウムとの混合液を調製しNMR解析をしたところ、トレハロース分子中の2位と4位の水酸基がカルシウムと相互作用することがわかりました。このトレハロースとカルシウムとの結合形成が、実はリン酸による不溶性塩の生成を阻害していたのです。また、同様に鉄イオン、銅イオン、マグネシウムイオンなどのミネラルとも相互作用することがNMR解析によって明らかになっています。最後に、トレハロースとミネラルの相互作用を利用した応用例をご紹介しましょう。ビタミンC(アスコルビン酸)は鉄や銅イオンなどのミネラルが存在すると、容易に分解し着色してしまいます。そこにトレハロースを添加しておくと、鉄や銅イオンによるビタミンCの分解・着色が抑えられます。この効果は、上述のトレハロースが鉄や銅イオンと結合しやすい性質のためと考えられます。
最近では現代人の食生活の変化などにより、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの摂取不足が問題になっています。そこで、種々のミネラルを配合したサプリメント(栄養補助食品)が市場に出回っていますが、ミネラルの溶解性の問題や、ミネラルと他の成分との反応性の問題などで、配合する成分の種類や量などに制約がかかってくるはずです。このような時、上述のトレハロースの特性をうまく使ってみてはいかがでしょうか。
| ■図1 |
普通
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トレハが入っている
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カルシウムがリン酸に捕まって水に溶けなくなり、 沈殿してしまう |
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カルシウムとトレハが引っ付いて、水に溶けたまま |
図1.カルシウムの不溶性リン酸塩形成の抑制
カルシウムイオンとして25mgと糖質を含む水溶液10mlに50mMリン酸緩衝液(pH6.8)を40ml加え、37℃で3時間放置して沈殿を生成させた。遠心分離した上清中に残存するカルシウムイオンを原子吸光法により定量した
1) 久保田倫夫;New Food Industry,44(2),1-8(2002)
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牛肉や鶏肉などの下ごしらえのときトレハロースをなじませて、煮る、焼くなどの調理をすると、材料からの獣臭(けものしゅう)が少ないことが官能的に認められていました。これは何故でしょう。食品に含まれるあぶら(油脂、脂質)が、加熱調理や長期保存の間に分解し、不快臭のもとになる揮発性アルデヒドが生じることはよく知られています。油焼けとか変敗とも呼ばれる現象です。油脂の構成成分である脂肪酸を用いた実験で、トレハロースは脂肪酸の加熱分解を抑えることが分かりました1)。脂肪酸を加熱するときにトレハロースが存在すると、脂肪酸の分解が抑えられて、揮発性アルデヒド生成が少なくなるのです。トレハロースを用いて調理した後の獣臭が少ないと感じたのは、あぶらの分解により生じる揮発性アルデヒドが少なかったからなのです。詳しく調べてみると、トレハロースは脂肪酸が変質を受けやすい不飽和二重結合部分と相互作用することにより、酸化分解から脂肪酸を護っていることが分かってきました2)。トレハロースは、見た目には油と馴染んでいるように見えませんが、ミクロな世界でみると、不思議な作用を示します。
お米が古くなると、いわゆる“古米臭”を感じます。白米を精米した後長期保存しておくと表面が酸化して、古米臭が強くなります。精米直後にトレハロースでコーティングしておくと、“古米臭”が少なくなることが認められました。これも米の脂質成分の分解をトレハロースが抑えたためと考えられます。同じように、魚に多く含まれ、記憶力やボケ防止に良いとされるドコサヘキサエン酸(DHA)、動脈硬化予防効果があるといわれるイコサペンタエン酸(EPA)なども加熱調理のとき分解しやすいのですが、トレハロースはこれらの高度不飽和脂肪酸の分解をも抑えてくれます。素材が本来もっている旨味、機能性を壊さない“ちから”をトレハロースは持っているようです。

トレハが入っていない場合 |
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トレハが入っている場合 |
1) 奥ら、日本食品科学工学会誌、46, 319-322 (1999)
2) 奥、トレハロースシンポジウム記録集、30-35 (2000)
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トレハロースは糖度を高くすると、比較的結晶が出やすい糖類です。 その特長を活かして、キャンディ、アイシング、フォンダンあるいはメレンゲ等では従来にない安定した食品づくりに利用されています。しかし、配合によっては、結晶が出過ぎてもろくなることもあります。
ところが、ここでトレハロースに加えてハローデックスを数パーセント以上加えることにより、トレハロースの結晶の成長を抑えることができます。 これは、砂糖の結晶析出を砂糖結合水飴(カップリングシュガー )が抑制するのと同様に、ハローデックスの主成分であるマルトシルトレハロース(構造の一部にトレハロースを有している)が、トレハロースの構造類似物であることから、トレハロース結晶の成長を邪魔することによると思われます。
もう少しわかりやすく説明すると、結晶というのは同じ化合物が一定の規則に従ってジャングルジムのように規則正しく並んだものです。しかし、そこに形が非常に良く似ているものが入ってくると、ジャングルジムがそれ以上組めなくなってしまうような現象です。要はそれ以上大きくなれないのです。 このように、トレハとハローデックスをうまく組み合わせることで微結晶を作り出し、滑らかな食感を得ることができます。今まで利用できなかった食品などに応用してみてはいかがでしょうか。
トレハロース単独の時
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ハローデックスを加えた時
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トレハをキャンディ生地に配合すると、吸湿性が低く、さらに、サクッとした食感に仕上ります。これは、トレハを添加することで、キャンディがより安定な"ガラス状態"になるからです。
ガラス化(状態)とは、成分が結晶したり溶融したりせず、成分中の分子の運動が極端に抑えられた、非常に安定な固形状態であると説明できます。また、ガラス化する時の温度を "ガラス転移温度"と呼んでいます。食品によって、あるいは水分含量によってガラス転移温度は異なりますが、それぞれの食品が保存される温度帯、あるいは流通される温度帯以上 に食品のガラス転移温度を上げてやれば、様々な反応が起こりにくくなり、より安定な状態になるわけです。 例えば、キャンディA(ガラス転移温度;50℃)とキャンディB(ガラス転移温度;20℃)があるとすると、キャンディAの方がより安定なキャンディといえます。日本では気温は 高くてもせいぜい40℃程度てですから、キャンディAのガラス転移温度は気温よりたえず高く、いつもガラス状態にあるため、より安定なのです。ところが、キャンディBの 場合には、冬場はいいのですが、夏場のような暑い時期になると、ガラス転移温度以上になり、ガラス状態からラバー状態(ゴム状態)に変化し、より不安定な状態になるわけです。 ちなみに、カツオ節も代表的なガラス状食品ですが、そのガラス転移温度は120℃程度と非常に高いことが知られており、安定なわけですね。 したがって、食品を安定化させるためには、いかにガラス転移温度を上げてやるかがポイントとなります。この点、糖質の中では、トレハやハローデックス (マルトシルトレハースを主成分としたシラップ)は、そのもののガラス転移温度が高いため、種々の食品に添加した場合、ガラス転移温度を効率よく上げ、よりガラス化状態にし やすいのです。 身近な食品でガラス状態のものを例に挙げると、上述のキャンディやカツオ節以外に、ハードキャンディ、クッキー・ビスケット、粉末調味料、アイスクリーム、各種冷凍食品、 珍味類、せんべい、天ぷら衣……など、数多くのものが知られています。トレハやハローデックスなどの糖質をうまく使用することにより、食品の物性改善とともに、品質改善・向上に チャレンジしてみませんか。場合によっては、ガラス化技術により、面白い食品が創製できるかもしれませんよ。
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食品や飲料とともにお腹に入った糖質は、小腸上皮細胞表面の酵素で加水分解されて消化吸収されます。小腸上皮細胞の表面はブラシ状の 形をしており、ここにいろんな酵素が存在します。例えば、砂糖(スクロース)はスクラーゼという酵素によってブドウ糖(グルコース)と果糖 (フラクトース)に分解され腸管から吸収されます。麦芽糖(マルトース)はマルターゼという酵素によってブドウ糖に分解され吸収されます。 では、お腹に入ったトレハロースの行方は?ヒトを含む多くの動物はトレハラーゼという酵素を腸管に持っています。トレハラーゼは、トレハ ロースだけを分解できる酵素です。小腸に届いたトレハロースはこのトレハラーゼによって分解され、ブドウ糖として腸管から吸収されます。 したがって、トレハロースはブドウ糖や麦芽糖と同様、栄養学的なエネルギーはグラムあたり4キロカロリーです。(小腸での挙動:下図参照)

ところが、トレハロースの消化吸収パターンが、ブドウ糖や麦芽糖の場合と少し異なることが分かってきました。ブドウ糖や麦芽糖を食べると 急激に血糖が上がり、30分ぐらいにピークとなり、その後急激に低下します。ところが、トレハロースの場合は、血糖の上昇が緩やかで、ピーク 値も低く、またゆっくりと低下していきます。(グラフ1参照)
エネルギーを一挙に使わず、後半にためるパターンと言っても良いかも知れません。また、インシュリン分泌も血糖のパターンと同様の挙動を示します。(グラフ2参照)トレハロースは、ブドウ糖や麦芽糖に比べ低い血糖ピークと持続的なエネルギー供給作用を示 すことから、新しいスポーツ栄養食品・飲料への使用が薦められます。 トレハロースを食べたとき、何故、血糖の上昇が緩やかでピーク値が低く、インシュリン分泌が低いのでしょうか?小腸のトレハラーゼ活性は、マルターゼ活性に比べて低いのは事実です。それだけが要因かどうかは不明です。 いずれにしても、トレハロースを食べたときに急激な血糖の変化がないということは、身体にとってやさしい糖質ということができます。そういう意味では、スポーツ栄養食品・飲料のみならず、ライフスタイル商品にも適した糖質ということが言えるでしょう。
糖負荷試験【第六回トレハロースシンポジウム記録集より抜粋】
12人の被験者(男性11人・女性1人):一般的な体調に関するアンケート
24時間の食事記録、テスト前は同じパターンの食事摂取
飲料<レモン味、カロリー同一(グルコース以外)、甘味度同一>
●プラセボ●グルコース(7.5%)●マルトース(7.5%)●トレハロース(7.5%)
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グラフ1(血糖への影響)
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グラフ2(インシュリン濃度への影響)
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青汁やトマト、ピーマン、人参などの野菜ジュースにトレハロースを少量(重量の2〜5%)加えて溶解することにより、特有の生臭み、渋み、苦味、えぐ味などの味が低減され、非常にまろやかで、美味しくなります。 同じような味の変化は、醤油、漬物の塩辛味や酢の酸味などの味を引立てたり、レモンの酸味やコーヒー、煎じ薬などの苦味や渋み、更には、豆乳や卵などの生臭みや肉類の動物臭などを低減することができることも明らかになりました。いわゆる、矯味・矯臭効果です。 さて、人は味覚をどのようにして感じるのでしょうか?
舌の表面には、味物質(渋み、苦味、えぐ味など)を受け取る箇所があり、ここに味物質がくっついた時発生する電気的刺激が脳に伝わることにより、「甘い」、「酸っぱい」、「にがい」、「塩辛い」、「ウマイ」などの味覚を感じるのです。 この味物質を受け取る箇所を変化させることで、味覚を変えてしまうものもあります。その一つに、ミラクルフルーツ(西アフリカ原産の潅木の赤い果実)があります。これを食べると1〜3時間、酸味を甘く感じようになります。ミラクルフルーツに含まれるミラクリンという糖たんぱく質が舌の酸味を感じさせるところ(味蕾)に吸着し、味覚機能を一時的に変え、酸っぱいものを甘く感じるようにするためです。同じような作用を持つものに、クルクリゴの実に含まれるクルクリンがあります。この場合には、水を飲むだけで甘味を感じるようになります。
トレハロースの場合についてもいろいろ試験を行っていますが、現時点では、作用メカニズムを解明するまでには至っておりません。ただ、九州大学大学院、都甲教授の研究によると、苦味物質であるキニーネ溶液に砂糖、フラクトース、トレハロースを加えて味覚センサや近赤外分光光度計を用いて相互作用を調べた結果、トレハロースとの作用が最も強く、苦味抑制効果が大きい事が示唆されております。(下記図参照)しかし、少なくともミラクリンやクルクリンのような作用でないことは確かですし、匂いや味覚の成分を分解したり、構造を変化させて他の物質に変えるのでないことも確かです。
前にも記したように、トレハロースを少量加えることにより、臭いや味覚をやわらげ飲みやすい飲料とすることができます。
トマト、ピーマン、人参などが嫌いな子供たちにも、美味しく飲みやすいジュースとして与えることが出来るようになります。家庭で野菜ジュースなどを作るとき、是非、効果を確かめてください。

【『味覚センサと近赤外分光分析法を用いたトレハロースの計測』より引用】
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トレハロースは、澱粉の老化抑制作用、蛋白質の変性抑制作用をはじめ数多くの機能を有しています。
ではなぜ、トレハロースにはこのように多くの機能があるのでしょうか。
この問いに対して幾つかの要因が考えられます。その一つに、トレハロースが他の糖質に比べ、非常に高い水和力を持つことがあげられます。これは、トレハロース分子が 水分子を周りに強く引き付け、分子集合体を形成することで(図1)、粘度が高くなる傾向が認められることからも明らかです。
そこで、ショ糖水溶液にトレハロースを25%、50%、…と置換していった時の粘度を測定した所、例えば40℃付近では、 ショ糖の半分のトレハロースに置換した水溶液の粘度は、ショ糖100%水溶液の粘度の2倍近く高くなります(表1)。 トレハロースの分子量はショ糖と同じはずですが、不思議ですね。要は、トレハロースは水分子と結合しやすい、 すなわち水和力が高いために、粘度の差となって現れるのです。
トレハロースの水和力の高さを利用することで、餅、団子、米飯、スポンジなどの澱粉の老化による硬化やパサツキなどを抑制できます。 その他にもトレハが持つ冷凍食品などの冷凍・解凍後のドリップ防止等の機能性を、是非お試しください。
【トレハロースと水のかかわり】
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【ショ糖・トレハロース混合液の粘度】
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食品の「ニオイ」には、フレーバーなどの心地よい香気と、不快に感ずる悪臭とがあります。トレハロースは、香気を安定化したり保持する作用とともに、食品の悪臭の発生を抑制する機能も持っています。例えば、脂質を含む食品が劣化すると、過酸化脂質が生じ、それが変敗して「変敗臭」といわれる揮発性アルデヒドが発生します。トレハロースは脂質そのものを酸素から保護して、有害な過酸化脂質や揮発性アルデヒドの発生を著しく抑制し、食品の品質保持に働く糖質です。(参照:トレハの不思議 第5回トレハとあぶら)この機能は、食品だけでなく化粧品にも応用できます。高齢者に特有の臭いの主成分は2-ノネナールという物質で、これは皮脂の酸化によって発生します。トレハロースを高齢者の皮膚に塗布すると、2-ノネナールの発生を抑制することがボランティア試験で確かめられています。
また、魚肉臭は魚肉に含まれるトリメチルアミンオキシドが悪臭のトリメチルアミンに変換することで起こります。魚肉鮮度の重要な指標で、鮮度の低下とともにトリメチルアミンが発生します。トレハロースはトリメチルアミンの発生を抑え、魚肉の鮮度を保持する作用を有しています。 さらに、卵や牛乳を加熱すると、特有の嫌な臭いが生じます。これは、タンパク質に含まれる含硫アミノ酸が分解して、悪臭の硫化水素やジメチルスルフィドが発生するためで、本来の新鮮な味を損ねるものです。この発生には、過酸化脂質が関与する反応と、単純な分解反応とがあるといわれています。この単純な分解反応は、熱・光・酵素などの影響によりおこり、トレハロースはこれらの攻撃から食品を守ることができます。 トレハロースは過酸化脂質の生成を強く抑制するだけでなく、単純な分解反応も抑え,硫化水素やジメチルスルフィドの少ない加熱食品を作ることができます。 食品の「ニオイ」は、その食品の品質や鮮度の重要な指標であるだけでなく、食感や食欲に深く関わる大切な要因といわれています。トレハロースを利用することで、本来の香気を引き出し、臭いを抑制した食欲をそそる新しい食品を創造することができます。
| 単純な分解反応 |
トレハがない場合
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トレハがある場合
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| 光・熱・酵素の影響で、タンパク質に含まれるアミノ酸が分解され悪臭を発生します。 |
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トレハが光・熱・酵素からアミノ酸の分解をまもるので、悪臭が発生しません。 |
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近年、欧米諸国において健康意識の高まりとともに日本食ブームが起きてます。中でも、比較的低カロリーであるお米を使った食品、 特に、にぎり寿司に関心が高まっており、多くの人々に食され始めているようです。これらお米を使った食品は、海外の多くの国では食品衛生上の問題から、 どうしても低温もしくは冷凍状態での保存及び流通が求められます。そこで問題となってくるのは、澱粉質を多く含む食品を冷凍又はチルド状態で保存・流通 させることにより発生する"老化"という現象です。"老化"が発生すると、商品価値が低下してしまいます。
この澱粉の老化はどうやって起こるのでしょうか?初めに澱粉は図1-Aのような構造をしています。ここに水を加え加熱することで、澱粉の構造がひろがり その隙間に水分が入り込んだ状態:糊化澱粉(図1-B)に変化します。ご飯などがふっくら柔らかくなるのはこのためです。ただしこの状態で置いておくと、隙間 に入り込んだ水分が徐々に失われ、初めと同じような構造(図1-C)に戻り、硬くなってしまいます。これが澱粉の老化で、ちょうど置いておいたご飯が硬くなって しまったのと同じことです。
こうした澱粉の老化は、アミロースなどの会合(脱水状態による水素結合の生成)が関与していると言われています。この時糖質を用いると、糊化澱粉の水を逃さ ずに保つ(保水)ことができ、水素結合の生成を阻害して、老化を遅らせる(図1-D)ことができるのです。 トレハは他の糖類と比べて、水分との結びつきが非常に強い(「トレハと水和」参照)ため、澱粉の水素結合を阻害し、老化を遅らせているのです。なおかつ甘さが 低いので、ご飯を炊く際に使用してもその甘さが出ることがないのです。
トレハを使用して、多くの製品の澱粉老化を抑え、商品の付加価値を高めてみてはいかがでしょうか。

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魚介類の多くは、加熱調理すると特有の臭いが生じ、その臭いがいやで、魚介類が嫌いな方も少なくないと思います。
それでは、なぜ魚臭は発生するのでしょうか、また、魚臭の発生を抑える方法はないのでしょうか。以下にそれらの問いにお答えします。
魚臭の原因の一つは、たんぱく質や脂質の分解によ り、低分子の揮発性物質が生成するためと言われています。 もう一つの原因は、生魚には多かれ少なかれトリメ チルアミン-N-オキシド(TMAO)という前駆物質がふくまれており、加熱調理するとTMAOが分解し、 魚臭の重要な成分として知られるトリメチルアミン (TMA)やジメチルアミン(DMA)が生成することによるものです。 そこで、私たちは魚臭発生ルートのうち、後者に着目し、サバ肉ミンチに各種糖質を加え、加熱処理後のTMAとDMAの発生量を調べました。
すると、加熱前に トレハロースを加えた場合が、それらアミン類の発生を最も抑える効果が高いことがわかりました。 また、TMAOの酸素の部分とトレハロースが相互作用することにより、TMAOの分解を抑制することも推定されています。 これから、鍋のシーズンがやってきます。魚、貝、うに、エビなどの魚介類の臭いがいやな方、加熱調理前にトレハ ロース処理して、それらを美味しくいただきませんか。

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酸素(O2)は、人間にとっても大切なものです。しかし、酸素が活性化されると、 活性酸素(スーパーオキシドなど)になって、血管の障害、老化、癌化、白内障、アルツハイマー病、腎障害、シミなどの原因になると いわれています。実は、この活性酸素が体内で自然に発生していることもわかっています。呼吸で吸収した酸素は細胞の中で水に変換さ れますが、その時、数パーセントの酸素からスーパーオキシドが生成します。本来、人の細胞の中には、悪玉スーパーオキシドを分解す る酵素、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD酵素)があり、その働きによって細胞が守られています。SOD酵素の量は子供や運動選手 に多く、一方、歳を取るとともに減少することもわかっています。加齢とともに細胞を保護する作用がなくなってくるわけです。
SOD酵素以外にも、野菜や果実にはSOD酵素と同じ働きをする物質が含まれています。SOD様物質といって、活性酸素を分解する作用があり、 その成分はフラボノイドやポリフェノールであることがわかっています。野菜や果物が健康によいという理由の一つです。しかし、SOD様 物質は熱や酸化に弱く、壊れやすいことが欠点になっています。
トレハは、デンプン、たんぱく質、脂質の劣化を抑制する作用とともに、SOD様物質を保護する働きも持っています。ニンジン粉末の SOD様活性の安定化を調べたところ、トレハ以外の糖質では保護作用が弱く、トレハロースが強い保護作用を有していることがわかり ました(表1)。また、ニンジンだけでなく、キュウリ、キャベツ、ほうれん草など各種の野菜でも、その作用を示すこともわかっています (表2)。トレハには大事なSOD様物質を熱や酸化から護る働きがあるのです。
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お菓子を始め、最近ではその機能性から料理にも使われているトレハ。このトレハをアサリ、シジミなどの貝の砂抜きに使用するだけでも、美味しさがずいぶん変わることが明らかになりました。
方法は簡単、砂抜きする水(アサリの場合、1Lの水道水に約30gの食塩を入れてください。シジミでは約10gです)に、トレハを約10g程度入れるだけです。この水溶液を貝が十分に浸る程度入れ、暗所で2〜5時間程度置いて、砂抜きをしてから料理に使ってください。トレハの効果で、貝類の旨み成分「コハク酸」が増加して(下図)、アサリやシジミがいっそう美味しくなります。さらに、臭み成分「トリメチルアミン」の発生も抑制され(トレハの不思議:第13回「トレハと魚臭」参照)、新鮮な貝の味が堪能できます。さらに、料理の具材にもトレハを加えると、アクの発生やマグネシウムの流出も少なくなり、さらに美味しさがアップします。
この砂抜きを水道水のままでおこなうと、アサリやシジミの旨み成分「コハク酸」が貝から逃げたり、臭み成分「トリメチルアミン」が発生しやすくなります。 お吸い物、バター炒め、酒蒸しなどでアサリやシジミを調理する際に、トレハを是非お試し下さい。
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鶏肉は、食卓にのる食肉の中で最もポピュラーな食材で、その国内生産量は約123万トン(平成14年)で、牛肉の約52万トン、豚肉の約87万トンと比べ多く、重要な動物性タンパク源の一つであります。昭和30年代に国内で大規模生産がはじまり、現在では、国民一人当たり1年間で10.4Kgの鶏肉が消費されています。しかし、最近、その消費も頭打ちが見られるともいわれています。生産性や品質は飛躍的に向上したものの、消費者は鶏肉そのものへの好き嫌いがはっきりしており、それが消費の頭打ちの原因となっています。特に、鶏肉には独特の臭みがあり、その臭気の主成分は「2,4-デカジエナール」であるとわかっています。
2,4-デカジエナールは、鶏肉を加熱した時、含まれる油の不飽和脂肪酸から発生します。鶏肉には不飽和脂肪酸が多く含まれており、その不飽和脂肪酸が加熱分解し、2,4-デカジエナールや他の脂肪酸アルデヒドも発生させます。その量や種類によっては香ばしい香りにもなるのですが、一般的には、2,4-デカジエナールや脂肪酸アルデヒドは不快臭として嫌われています。
トレハロースには、鶏肉の不快臭を低減する作用があります。鶏肉を加熱調理する時にトレハロースを加えておくと、2,4-デカジエナールなどの不快臭の発生を抑制できます。そのメカニズムは、トレハロースが物理化学的に不飽和脂肪酸の弱い部分を防御することによって、その分解を抑制し、不快臭を少なくしていることがわかっています。(トレハの不思議「トレハとあぶら」参照)
トレハロースの効果はそれだけでありません。鶏(ブロイラー)を飼育している時、その食餌にトレハロースを加えることで、鶏肉の不快臭が少なくなることが発表されました(図1,2)。不快臭の少ない高品質の鶏肉です。そのメカニズムはまだ明確でありませんが、不快臭の原因となる不飽和脂肪酸の含量が低下することも一因であるとも考えられています。このように、トレハロースは、調理時の鶏肉だけでなく、鶏そのものを飼育している時からも、鶏肉の不快臭を低減する作用があることがわかりました。
(第10回トレハロースシンポジウム、松下浩一、山梨県畜産試験場)
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食品の美味しさは人間の五感と密接しており、味覚は甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の五味、触覚は温度、歯応え、喉越しなど、臭覚は香りや匂い、聴覚は食事の音、おしゃべり、バックグランド・ミュージック、視覚は食品の形や色などがあります。それぞれが重要な因子で、ほどよくハーモナイズして食事の美味しさを創りあげています。トレハロースはこの五感にマッチした糖質で、食品の味覚を調えたり、歯応えや喉越しを良くしたり、香りをコントロールしたり、サクサク感を与えたりする作用があります。トレハロースは食品の色に対しても優れた効果を示すことも知られています。
食品はその食材の保存・流通や加工によって本来の色が失われたり、退色したりすることがあり、その場合、食品加工上、食材に着色料を加え色彩を調えることもあります。できれば、着色料を使わずに、食材本来の天然色が食事のお皿にのれば、食欲も随分そそるのですが。 例えば、リンゴの皮をむいてしばらく置くと、切り口が茶褐色に変質してゆきます。これは褐変といって、果肉中のポリフェノールなどの芳香族化合物が酵素によって酸化を受けるためです。切り口をトレハロースで処理すると、この褐変が抑制され、リンゴ本来の色彩を保つことができます。この作用は、トレハロースが芳香族化合物と結合して(1、酸化から芳香族化合物を保護しているためだと考えられます。
また、野菜や果物を乾燥すると、乾燥や保存中に天然色素の色が退色したり変質したりします。トレハロースはこの退色や変質に効果的で、本来の色彩を残した乾燥ニンジンや乾燥果物を調製することもできます。
野菜や果物の変色防止にもとても効果的です。 例えば、ホウレン草を茹でると、葉の葉緑素クロロフィルから大事なマグネシウムが離脱してフェオフィチンに変化します。その時、クロロフィルの緑色からフェオフィチンの茶色に変色してしまいます。トレハロースはクロロフィルからマグネシウムが抜け落ちる反応を抑制する作用が強く(2、ホウレン草の緑色を色鮮やかに保つ効果があります(写真1)。
このように野菜や果物をはじめ、さまざまな食材に対してトレハロースは色彩を保つ作用があり、トレハロースは食事の艶やかさを色彩の面から演出することのできる糖質です。
1)奥和之ら、日本農芸化学会2005年度大会要旨集、96 (2005)
2)Oku, K et al. Bioosci. Biotechnol. Biochem., 69, 7-12 (2005)
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トレハロースは、自然界では微生物から高等植物、無脊椎動物まで広く存在しています。微生物ではストレスに関係する糖質として働き、低温や高温、乾燥、圧力、浸透圧、薬剤などのストレスを微生物が受けると、細胞内にトレハロースを蓄積し、ストレスの傷害から保護する働きがあると考えられています。無脊椎動物では主に体液に含まれていて、血液の糖質としてエネルギー源に利用されています。例えば、スズメバチが長く飛行できる能力もトレハロースのおかげだと言われています。
では、高等植物ではトレハロースはどのような働きをしているのでしょうか。10年ほど前までは、一般的な高等植物からトレハロースが抽出されなかったことから、トレハロースは植物の体の中では作られないと考えられていました。しかし、最新のゲノム研究の結果、高等植物にトレハロースを作る遺伝子が存在することが明らかになっています。微生物や動物では1または2セットしか遺伝子がないのに対して、高等植物は約10セットと非常に多くの遺伝子をもっており、植物体内でトレハロースが作られ、極めて重要な働きをしていると考えられています。現在、植物体内のトレハロースはストレス応答と器官分化、生長に関与すると推定されています。
ストレス応答の働きでは、トレハロースは低温、乾燥、塩ストレスに関係し、ブドウ糖や果糖などの糖代謝シグナルや植物ホルモンであるアブシジン酸の誘導などを引き起こします。低酸素ストレスや窒素栄養にも関係していると考えられています。つまり、トレハロースは植物の体を守る働きがあると思われます。例えば、トレハロースを蓄積させるように遺伝子組換えしたタバコや稲は乾燥や寒さに強くなったことが確認されています。
植物体内だけでなく、植物の外のトレハロースはどのような働きをしているのでしょうか。興味ある研究が行われています。稲に外部からトレハロースを接触させ、DNAがどのようになるかという試験を行ったところ、稲の病害防御に関係する遺伝子の数多くが増強されることがわかりました。つまり、トレハロースによって病気に対する抵抗性が強くなったということです。近い将来、トレハロースによって、農薬を少なくしても元気に育つ稲や野菜の実現が期待されます。
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